『悔しい涙』



 若い神官であるフレイは、与えられた役目も早々に果たしたことで、襟元のボタンを一つ外すと、小さく深呼吸した。
 初めて単身で、広大な平原の丘に位置する”花香る町”と呼ばれる街に赴いたフレイは、 思いついたように噴水脇のベンチに向かうと勢いよく腰を落ろした。 がちゃり、と腰に装備した片手剣の柄が木製のベンチに当たって音を立てる。 それは、一度も実戦の経験を経ていない無傷の短剣だ。 銀色の装飾はまるで、高級なアンティークのようだ。しかし、それは同時にフレイ自身の能力を認められ、 神官の地位を与えられたという一つの証明であり、誉れの象徴でもあった。
 穏やかすぎる午後のひと時であるが、生憎と見上げる空は雲がかかって辛気臭い。 夕方には雨が降るかもしれない。 そう思い当たると、フレイは苦笑いして頬杖をついた。単純に彼は、晴れている空が好きだった。 雨が降っていては、作り上げた自由な時間を使って、ぶらぶらと歩き回る楽しみも半減してしまう。
「…帰るかな」
 自室に戻って、手に入れた自由時間を普段どおりに消化することに早々に考えを切り替えた。 誰に言うでもない独り言を呟いて、荷物の中から時空間を歪める力を持つ魔物の羽を加工した魔法具を探した。 しかし、いくら探してもあるはずのものが見つからない。どこかに落としてしまったのか、初めから持っていなかったのか。
 なんと運の悪い日だろう。フレイは首をかしげると、仕方ない道具屋に向かうことにした。 自分にも空間移動の呪文の適正があればいいのに、と、何気なしに考えながら。

 道具屋の前で、フレイは少女に目が行った。 容姿が特異なわけでもない。ただ、気になるのは何かを探すようにきょろきょろと周囲を落ち着きなく、しきりに見回していることだ。
「…どうかしたのかな?」
 少女の困り果てた姿が気になってフレイは声をかけた。
「…ウサギを探しているの」
 少女は突然に声をかけられたにも関わらず、純粋に澄んだ瞳で彼を見上げた。
「…いなくなってしまったの?」
 10歳程の幼い少女は、あからさまに肩を落とした。
「うん」
 フレイは小さく笑うと、膝を地面に落として彼女の肩を叩いた。
「私が失せ物をしたのも、ここで話を聞いたのも何かの縁。一緒に探してあげるよ」
「本当!?ありがとう!」
 少女は小さな体をいっぱいに使って、ウサギの大きさや色、特徴を説明した。 特にその腕を頭の上に持ち上げて、「耳は長くてピンと立っているの!」とジェスチャーしたときには、 その無邪気さに思わず噴出してしまった。

 しばらくの間、町の中を二人は歩き回った。 途中で彼女の母親に出会ったが、事情をすぐに悟ると「神官様に失礼なことを」と思い当たったのか卒倒しそうになったが、 彼はただのお節介なのだから、と話すと涙ぐみながらも感謝の言葉を述べた。
 しかし、肝心の彼女の友達を探し当てることはできなかった。
 フレイは再び公園のベンチに彼女を座らせると、飲み物を買って与えた。
「もしかしたら、町の外に出てしまっているかもしれないね」
「……うん」
 それならば、見つけるのは難しいだろう。 それに彼自身も戻らなくてはならない。がっくりとした様子に、フレイは眉間にしわを寄せて思案すると彼女を励ますように言った。
「また、探しに来るよ。私が見つけたら必ず連れて帰ってくる。…それに、お友達も戻ってくるかもしれないしね」
「うん」
 口数も少なくなってしまった少女の手を引いて家に送り届けて、手を振って別れると、フレイは再び道具屋に向かわなければ帰ることが出来ないことを思い出した。
 出張の思い出と呼ぶにはあまりにも後味が悪い。 フレイは軽くこめかみを押さえると道具屋で買い物を済ませた。
(こういうことも、まぁ、あるよな)
 自身に言い聞かせるように頷くと、フレイは羽の形をした魔法具を投げるべく構えた。
「神官様!」
 大声で呼ばれて、何事かと振り向けば、先ほどの母親。
 余程慌てているのか、肌寒くなってきた夕刻だというのに何も羽織らないままだ。
「どうかしたのですか?」
「娘が…どこかへ飛び出して行ってしまったのです!」

『もしかしたら、町の外に出てしまっているかもしれないね』
 先ほどの自分の言葉だ。…血の気が引けたのを自覚した。

「お母さんは町の中を探してください。…私は町の外を探します!」
 そう叫ぶと、母親が頷くのも見届けずに全力で市門へと向けて走った。
 日も暮れれば、獣も魔物も徘徊を始める。もしも、何かあれば、自分の責任だ。 フレイは奥歯をギリっとかみ締めた。
 日も落ち始めると、空を覆っていた雲も手伝って周囲はあっという間に青黒く染まり始めた。 高い茂みを見れば、彼女が草の間に友達を探して屈んでいるかもしれない、と大声をかけた。 空しく自分の怒鳴り声が通るだけで、何の反応もない。
「---!」
 何か甲高い音が聞こえた気がして、フレイは反射的に振り向いた。
 振り向いたその上空を鳥達のシルエットが何かから逃げ出すように飛び立っていく。 その源は森。刻々と闇に飲まれていく景色に黒く浮かび上がる森は、起こっていること全てを不気味に押し隠している。
 嫌な予感ばかりが増す中、フレイは迷いなくそこへ向けて走った。


 そこで彼は鼻を刺すような血の臭いと、目の前の様子に身を凍らせた。
 血塗れた衣装で倒れている少女。  そして、その少女の横に立っている男。 背丈は小さく、夕日色の鋭い瞳。草原の色をした髪を持つ、その男も血に汚れている。
 その男には見覚えがあった。
「ルオン先輩…、これは…どういうことですか?」
 フレイよりも三歳年上の神官は、唇を震わせて蒼白な顔のフレイに面倒そうに舌打ちした。
「……後輩。お前こそどうしてここにいる。邪魔だ。帰れ。この子供を連れてな」
「しかし…!」
 狼狽しきっていたフレイはルオンの思わぬ拒否の言葉に、視線を泳がせているうちに彼の手の中にあるダガーに目が行った。 赤い血べったりと塗りつけられているダガーに。
 フレイは憎しみを籠めて目の前の神官を睨み付けた。
「…まさか…」
「…?……あぁ、これか」
 ルオンは強い視線の原因を察すると、軽く嘲笑した。
「…妙なところにばっか気がついて、面倒なやつだな」
「…」
 フレイは怒りに身を任せて、剣を抜いた。真新しく曇りの一つもない刀身に、自分の顔が映った。
「なんだ、力比べがしたいのか?…研修中のヒナドリの相手をするのも面倒なんだが?」
「…力比べではありません」
「じゃぁ、取調べか?わかったよ。説得も面倒だ」
 ルオンは二本のダガーを両手に掴むと、重心を低く構えた。
「行きます」「来いよ」
 弾かれたように、フレイは間合いを詰めると真横に剣を凪いだ。
「!」
 切り付けたとばかり思っていたのに、そこにはルオンの姿はない。
「なっ?!」
 風を感じてみれば、真横にルオンの草原色の髪。
(速過ぎる…!)
 戦慄が脳を巡る。慌てて、攻撃に備えて剣を目の前に構えなおそうとした瞬間に、 ルオンの左手のダガーに剣は叩き落され、その動作のままに右のダガーが目前に迫った。
「!」
 思わず目を瞑った。
「この直情野郎!」
 鈍い衝撃が左頬から襲った。
 勢いが余って地面に倒れこんだまま半身を起こすと、 それが切られたのではなく、殴られた、と気がついてフレイは目を見開いてルオンを見上げた。
「…なんで…」
 見上げた先のルオンは両手のダガーを柄に収めているところだった。
「俺はお前の面倒見てる時間があるほどヒマじゃないんだよ。 お前みたいな役立たずはさっさと帰れよ。 …さっきの子供といい、お前といい、どれだけ俺の邪魔をすれば気が済むんだ」
「……っ!!」
 フレイは言葉に詰まりながらも、ルオンを睨み付けた。
「……その子は…………!!」
 唇を悔しさに奮わせるフレイの怒りの表情に、ルオンは呆れ果てたようにため息をついた。
「…後輩フレイ。お前は俺の想像以上に面倒なヒナドリだな。 誰が好き好んで生まれ故郷に住む子供を殺さなきゃいけないんだ。…いいか、俺は…」

「!!!!!」
 耳を裂くような騒音にフレイは肩を震わせた。 最早、音というよりも衝撃波のような魔物の声に森の木々も体もビリビリと痛いほどに痺れている。
 黒緑色に光る体面の鱗、鋭い牙。
「…竜族種の魔物?!」
 ルオンが再びダガーを抜いた金属音がした。
「違う。あれは魔蛇種の魔物の突然変異だ」
「まさか…先輩がここにいるのは…アイツと戦うために…?」
「まぁ、面倒ごとに巻き込まれたというところだけどな」
 フレイはルオンの意図に気がついたものの、一歩たりとも動くことが出来ない。 足は震えるばかりで動く様子がまったくないのだ。
 魔物は目の前の人間を丸呑みにすべく、その体をしならせて襲い掛かった。 牙が腕をかすめ、血が噴出すがルオンはなんとかそれを凌いでいる。 その巨大すぎる魔物と争うには、人間では小さく、あまりに無力。絶望的な映像だ。
「先輩…!無理です、逃げましょう…!」
 ルオンはその悲痛な声を聞いて、にたりと嗤った。
「こんなでかいヘビを放っておいたら、危ないだろ」
「でも…!」
 ルオンは茂みの前で身を屈めて、何かを引っ張り出した。
「さっきは子供が出てきて使い損ねたが、今度は外さない」
 ルオンは茂みの中から掴み出したロープを勢いをつけて寸断した。
 ガサガサと周囲の木枝や茂みを何かかが掻き分ける音にフレイは唖然とした。
「!!!!!」
 咆哮とともに、銀色のロープに拘束された魔物が宙吊りとなっている。
 ルオンが少し安堵したかのような笑みで立ち上がった。
「聖者の祝福を受けた銀を縫いこんだロープ罠だ!魔物には破れないだろ!」
「……すごい…!」
 呆然としたまま、立ち上がれないフレイにルオンは勝ち誇った視線を向けた。
「もうすぐティゲルトも来る。…すこし弱らせておくか」
 ルオンが何かの薬ビンを取り出すとダガーに麻痺薬を仕込んだ。 もがく事も出来ない魔物の頭に歩み寄ったとき、フレイは見た。 竜すらも拘束することができるはずの、聖縛のロープが千切れようとしているのを。
「いけません、先輩!」
「えっ…?!」
 綻んだ呪縛は瞬く間に千切れとび、飛び出した魔物の牙がルオンの肩を襲った。
「ぐっ…!」
 フレイに注意を促されたことによって、なんとか身をかわすことは出来たが、 毒を流し込まれたのかルオンはすぐに立ち上がったものの、足をふらつかせながら頭を抱えた。
「先輩!」
 声に反応してルオンがフレイを見た。
「なっ?!バカ、よけろ!」
「!」
 フレイはルオンに追撃しようと迫る魔物の標的が、自分に変わったことに気がついた。 血に塗れた牙と魔物の目に惹きこまれた。
「フレイ!」
 ルオンがフレイに飛び掛った。
「うっ!」
 背中を思い切り大地に打ち付けられて呻く。
「この…足手まといが…!」
 憎そうに弱い声で嘲ると、ルオンは体を転がして、フレイの上から離れた。 毒が回っているのか、目の焦点が合っていない。息苦しそうに目蓋を震わせると、歯を食いしばった。
「だ、大丈夫ですか、今、解毒を…」
「そんな時間はない。……いいか、お前の…左後方にもう一箇所同じ罠が…仕掛けてある。 それを使うんだ」
「し、しかし、効果がなかったではありませんか…!」
 ルオンは右手に持っていたダガーを差し出した。
「麻痺薬が仕込んである…それで、弱らせろ…」
 フレイは一瞬受け取るのに躊躇ったものの、しっかりとそれを握ると立ち上がった。
「!!」
 再び迫ってきた魔物の牙を、落としていた自分の剣を拾って受け止める。
「…ぐっ…!」
 腕を伝わる衝撃を耐え切ると魔物は体制を立て直すべく、再び身を回転させた。
(左後方に…走る!)
 フレイは罠の方へと向かって誘導するように駆出した。
(罠はどこだ…)
 先程は茂みに発動の仕掛けがあった。
(あれか!)
 フレイは茂みの隙間にわずかに姿を垣間見せた月明かりに輝く銀色を見つけて、懸命に飛び掛るように手に取った。
 速過ぎる魔物はすぐ後方に迫っている。

 それを切り離した。

 同じように音がして、再び魔物が縛り上げられる。
「やった…!」
 フレイは今度こそ、とルオンのダガーを強く握り締めた。
(タイミングがズレた!?)
 聖縛のロープは半端に魔物の胴を縛り上げ、その牙を振り回しながら頭を動かしもがいている。 このままでは再び逃げられてしまう。
 フレイは焦ってダガーを魔物の頭に向かって投げつけた。
「!!!!」
 ダガーは真っ直ぐに飛んで、魔物の喉元に突き立った。
「刺さったか!?」
「フレイ、避けろ!」
 誰かの声がしたかと、思った瞬間に魔物がロープから抜け出し、 一瞬のうちに魔物の尾がフレイの胴を捕らえた。
「うああ!」
 何度も大地を回転して、木の幹に打ち付けられてようやく倒れこんだ。 地面に這いつくばったままに、咳き込む。
 動けなくなったフレイの前に立ちふさがるように、大剣を携えた男が現れた。
「そのまま屈んでいろ」

 麻痺薬がわずかに効きだした一瞬の隙に、男の大剣が魔物の頭を突き通した。 あまりにも呆気なく急所を貫かれた魔物は暫く身をくねらせていたが、やがて動けなったようだった。 その様子を剣を片手に静かに観察してる背中に、フレイをその名を呟いた。
「ティゲルト…先輩…」
「じっとしていろ」
 神官ティゲルトは魔物を観察したまま、振り向かずにそう指示した。 フレイは視線すらも上げることが出来ず、ただ、下方向を睨んでいた。
「…おい」
 誰かの足が見えた。
「ルオン先輩…。毒は、大丈夫なんですか?」
「…俺は薬師だ。毒ぐらい、自分で処理できる」
 ルオンは手にしたバッグから薬草や薬類を取り出すべく、中をまさぐった。
「怪我を見せろ。処置してやる」
「…………いいです」
 フレイは口元を流れた暖かいものを強引に手の甲で拭った。
「……は?立ち上がれないくせに何を言ってるんだ」
「…自分でできます」
「…」
「…“僕”だって、自分でできます!」
 ルオンはまた面倒臭そうにため息を付くと、背を向けた。
「勝手にしろよ、ばかが」
「…」
 ルオンはティゲルトに一言二言、報告を済ませると、空間移動の呪文を唱えた。 その姿がうっすらと輝き、空間に溶け込むように歪んでいく。
「…今回は、少し、頑張ったと認めてやる」
「…え?先輩、今、何を…」
 聞き返した言葉も届いているかわからないままに、ルオンの姿は掻き消えた。
「……」
 フレイは初等の回復呪文を唱えると、ようやく立ち上がれるほどに痛みが引いた。 それでも、あばらが傷んで、今にも吐き出してしまいそうだ。
 倒れたままに寝かされていた少女の側へとなんとか、歩み寄る。
「…寝てる…だけ…」
 フレイは拳を強く握り締めた。
「先程ルオンから報告を受けた。魔物との戦いに巻き込まれたようだな。 怪我の治療は済んでいるが、後遺症で歩けなくなる可能性もあるそうだ」
 ティゲルトが言い辛そうにしながらも、冷静にそう伝えた。
「…っ」
 フレイは眠ったままの少女を抱きしめた。
「ごめん…。本当にごめんね。“僕”が、しっかりしていなかったから。 “僕”が、余計なことを言ったから、君の未来の幸せを奪ってしまうかもしれないんだね…」
「…フレイ。恐らくお前は疲れている。帰って休め」
 フレイは無言で立ち上がると、ふらふらとティゲルトの横に並ぶように立った。
「…先輩、魔物は…?」
「大丈夫だ。完全に力尽きた。あとはこいつを焼却処分する」
「………」
「報告は後日受ける。お前も帰って休め」
「………」
「帰らないのか?後は任せてもらって構わないぞ」
「………先輩」
「…どうした?」
 フレイはあちこち擦り剥いた顔のまま、 悔しさのあまりに目を赤くしてティゲルトを睨み付ける様に見つめると、懇願した。
「先輩、私は、強くなりたいです」
「…」
「お願いします。私は先輩のように、強くなりたいです」
 ティゲルトはフレイの剣を拾うと、彼の前に差し出した。 刀身には魔物の牙を受け止めた時についた傷が残っている。
「いいだろう。この剣がお前にその資格があると言っている」
「…」
 無言で剣を受け取るフレイにティゲルトはどこか懐かしそうに微笑んだ。
「お前を見ていると、昔の自分を思い出すな」



 数日後。
 コンコン、とドアをノックした。
「お客様がいらっしゃったから、開けるわよ」
 母親の声に、少女は小さく、はい、と答えた。
「具合は大丈夫?」
 フレイはドアを開けて、ベッドの中から窓の外を見つめる少女に声をかけた。 体中の怪我は神官ルオンの処置で、すでに痕跡すらも残っていない。
「どこも痛くない?」
「うん。…でも、神官様は…?」
 少女は頷くと、おずおずとフレイに聞き返した。 少女すらも驚くほどに、彼は包帯にぐるぐると巻かれた姿で現れたからだ。
「大丈夫。私は丈夫に出来ているからね」
 本当は先輩の助力を断り続けているから、とは言わなかった。
「ところで、今日は君に見せたいものがあるんだ」
 フレイは後ろ手に隠し持った籠を見せた。 中には、ピンク色のリボンを首に巻いた白いウサギ。
「ああああ!」
 少女は歓声を上げると、ベッドを飛び出して籠の中のウサギを抱きしめて、くるくると踊るように回った。
 …彼女の足は再び、大地を捉えることができたのだ。
「お友達はね、私の先輩が森の中で見つけて預かっていてくれていたんだ」
「良かった!また会えて良かった!神官様、この子はね、ミシェルっていうの!」
 フレイも側に寄って、白ウサギのミシェルの頭を撫でた。
「そういえば、君の名前を 知らなかった」
 少女はきょとんとした様子で、そういえば、と手を胸の前で叩いた。
「私はルルーです」
「そう、ルルー。私はフレイ。フレイ・アルメニス」

(ルルーの自由な移動を奪わず、また、友人を奪わなかったことに、深く感謝します)
 フレイはその日、話し相手を探していた少女の話を聞いて穏やかな時間を過ごした。






※花香る町=フレノール。空間移動の魔法具・呪文=キメラの翼・ルーラ。
魔蛇種の突然変異=とさかへびの強化版。とりあえず、黄金の腕輪の洞窟の関連か何か。

フレイ15歳。神官一年生で、まだまだ子供だった頃の話。 学者の家の出で、研究官の彼がティゲルトを師として剣を覚えようとするきっかけ。
まだまだ、学生気分が抜けていないので、素が出たり、我を忘れると、 一人称がつい“僕”に戻ってしまう。
三年後の18歳のときには、もう少し逞しくなって聖戦で初登場。24歳のときには頼れる先輩になっています。

ルオンは18歳。そろそろ一人前になって来たかなぁ。って頃。
夕日色の瞳、草原色の髪、というのはこの世界のフレノールの平原と夕日と同じ色。
ルオンが強いんじゃなくて、この頃のフレイが弱すぎるのです。

ティゲルト先輩は29歳。とりあえず、若者を見て「昔の自分を思い出す」と思ってしまうのは、 そろそろイイお年になってきたということです。