『心の底にくすぶるもの』
いつからだっただろう。
あの方への憧れを『恋』だと自覚したのは。
私はずっと、あの方を尊敬して止まなかった。この敬愛こそ感謝と忠義だと信じていた。しかし、私の視界に入る姫様は、私の中で特別な存在であることは疑いようのないこと。…なぜなら、私はあの方の全てをほかの誰かに渡したくないと妬んでいるのだから。
頑なに忠義に生きる戦士も、愛する家族を持つ商人も、果てはブライ様も。姫様と同時に視界に入れば、そのときには全て私の敵だ。
勇者様、底抜けに明るく笑う踊り子、誰にでも優しい占い師。彼女達は私が姫様を過ごすことの出来る時間を奪う泥棒に過ぎない。
以前はそうではなかった。
生きているだけで、姫様の側にいることが出来るだけで、それ以上望むことは何もなかった。私は贅沢者になってしまった。
しかし、私は知っている。十分すぎる程に理解している。
私の抱くこの想いが、適う日など永久に来ないことを。
…私は狂っている。
いつからだっただろうか。
私が、この抱く苦しみを『恋』と知って、『妬み』と『復讐心』に狂い始めたのは。
少しの間、考えてみたものの結局分からなかった。
きっと、私は最初からあの方のことを『好き』だったのだろう。
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(痛い恋愛七題:休まず愛して)