『時折、自分が何者かわからなくなるときがある→yes』



 私が院を抜け出したのは16年目の生を受けた年。
 なんとか城に辿り着けた私を保護し、仕えることをお許しくださった姫様は私の全て。 王族に認められたとあって、院は私を連れ戻すことは出来なくなったからだ。

 そして、今は18年目の生を受けている年。
 私は青い町を見回して溜息をついた。この短い間に全てが劇的に変化しすぎた。
 私は『シンデレラ』。
 これは一時の幻想なのかもしれない。12時を迎えれば、私はまたあるべき場所に帰るのだ。 物語のように都合よくは行くまい。私は永遠に姫様の傍に在ることは叶わないのだから。


「こんなところで何してるんですか?」
 背後から私に声をかけたのは同じく全てが劇的に変化した男。ただ、違うのは、“彼は選ばれた者”。
「眠れなくて。ご心配をおかけしてしまいましたか?」
「いや…。僕もですから」
 微かに微笑む勇者様。


 彼を見ていると思うのだ。

 どうせ導かれるのならば、私が勇者に選ばれれば良かったのに、と。




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(狂った七題:クレイジーフォーユー)