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『惑わせるものは誰か』
しばらく歩いていると突然、頭上の空間が開けた。
「これは……」
見上げた先では光が差し込んでいるように見える。地上が近い。
戦士が周囲に松明をかざして確認している。
「足場になる岩があるな。上っていけそうだ」
私も確認すると、おあつらえ向きにも岩場によじ登るにあたって掴むのに丁度良い木の根まで這っている。
手を掛けたその瞬間。
「クリフト殿!」
人の背丈ほどの大きさもある岩がぐらつき、私の眼前にせまった。
「!!」
私は思わず顔を腕で庇った。金属音が響いた。
「……??」
庇ったが何も起こらなかった。
目を開けると目の前で盾をかざす戦士の姿が。
「…………むぅ……っ!……小石など飛んでいないか?」
私を気遣うようなことを言いながら、大岩を盾でいなした戦士の腕は赤く腫れあがっている。
「どうして、貴方が私のために怪我をする必要があるのですか!」
……また……私の至らなさで借りを増やした。
理不尽なことを言っていることは分かっていた。
「ベホマ!!」
私は苛立ちをぶつけるような荒々しい癒しを起こした。
彼はそんな私の表情に気が付いたのか、困ったように苦笑いしたようだった。
「……どうも俺はそなたを困らせるようだな」
「困っているわけでは」
「ここを出られたら、俺の言うことは忘れると約束してほしいのだが」
私の言葉を遮るような静かな声だった。
「俺は、そなたのことだから守りたいのだ」
返す言葉を失ったまま、私は衝撃に脳を掴まれたようだった。
洞窟で遭難した私達が、その後どのように脱出したのかは、正直よく覚えていない。
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